俺たちはこの場所から動けない。
だからこそこの町、この仕事をもっともっと面白くしたいんだよね。
見渡す限りのキャベツ畑。
珍しい野菜がもてはやされる中、ひたむきに日常に密着した野菜だけを作り続け、流行り廃りではないいつもの野菜をより美味しく、より多くの皆さんへ届けられる農場を目指す。
それがいきいき農場の「農業」です。
いきいき農場の事務所がある岩手町へは、
東北新幹線で「いわて沼宮内(ぬまくない)駅」へ。
東京から乗り換えなしで2時間40分という好アクセス。
このいわて沼宮内駅、 日本で一番乗降客数の少ない駅として ちょくちょくテレビのネタになる。新幹線が自分のためだけに止まってくれたような優越感を、今なら味わえるだろう。
人口、1万3千人。
北緯40度線上に位置し、同じ緯度には大都市が多く「人間が健康で文化的な暮らしをするのに最も適した環境」らしい。
石の彫刻と、グラウンドホッケーが有名。岩手県立沼宮内高校ホッケー部は、オリンピック選手を輩出するほどの強豪高だ。
主幹産業は農業。特にキャベツの生産が盛んで歴史は古く明治初期から生産されている。
野菜以外にも、養豚、養鶏、牛の肥育、乳牛の肥育も多く行われている。
いきいき農場の前身、「三浦青果」が少しの畑と果樹園、
田んぼでスタートしたのが昭和41年。
初代 三浦五兵衛が、京都への丁稚奉公から帰ってきて始めた野菜生産。「リンゴも米も値段がどんどん下がってったんだ、だがら、そのときこの辺りでまだやってるやづの少ながった甘藍(かんらん、今のキャベツ)さ全部、畑つかったおんす。」
リンゴの木も抜いて、田んぼを土で埋めて、このあたりでは一番にトラクターの免許もとった。
仲間の農家も増えて、キャベツの産地として定着していった。
2代目 三浦正美が埼玉の大学を卒業後、後を継いだ。
既存の流通ではなく、スーパーとの契約栽培をスタート。「契約栽培だと価格も安定する。しかし欠品は絶対に許されない。だからスタッフにいつも言っているのは準備をしっかりすること。今撒いた種が収穫できるまで2~3ヶ月かかるんだからね。」
さらに、
「農業は、天気任せ雨任せじゃ、いつまでたっても産業にならない。確かに天気には勝てない、けど、予測して、対策をうつことはできる。」雨が降ろうが雪が降ろうが収穫作業は続けられる。それはお互いがプロとして相手に応えるために当然のことだ。
梅雨時期の雨の多い日も、冬の雪が降る中も。作業は続く、続く。
「スタッフには実力以上の事、新しい事へのチャレンジをしてもらうように意識している。失敗したってたいした問題じゃないけど、やらなきゃ、成長はないからね。誰だってはじめは初心者、一緒だよ。」
スタッフの一人、片野さんに話を聞いた。
片野さんは服屋、飲食店、制作会社などを経験した後、いきいき農場に就職。
盛岡市から1時間かけて通勤している。現在41才。
「農業やる前まで太陽の下で働くことも無くて、毎日同じ繰り返しの日々だったんすけど、農業って毎日良くも悪くも変化があって、やっててたのしいっすね。野菜もらって帰ると家族も「こんなに美味しい野菜食べたことない!」って喜んでくれるんで、やりがい感じてます。」
たぶん大変なこと、いっぱいあるんじゃないですか?
「でも、仕事って何だってたいへんですよね?農業だけが特別大変かというとそうじゃないとおもうなー。むしろ大変さ以上に喜びが多い仕事だと思うけどね。」
入社5年目、持ち前の明るさと何でも前向きに取り組む姿勢で既にリーダーとして周りをひっぱる存在になっている。
いきいき農場の7、8、9月は、それはそれは忙しい。怒濤の3ヶ月だ。
キャベツ、大根、とうもろこしの収穫が重なり、お盆でスーパーの需要も高まる。スタッフが協力しあわなければ乗りきれない。だからこそ、いきいき農場のスタッフの絆は強い。辛い作業も、この仲間だから乗り越えられるのだろう。
そしてこれからも、多くの仲間をみつけ、さらに前進していく。
そんな力がこの農場にはある。